沖縄・台湾そして有事シミュレーション

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元沖縄県知事公室長 又吉 進

 台湾を初めて訪れた沖縄県人は改めてその近さに強い印象を持つという。まさに空路一飛びで、東京や関西等よりはるかに身近だと気付かされる。私も例外ではなく、それまでごく近い隣人である台湾に余り関心を持たなかったことを深く反省した。このような反応は沖縄県人特有のものではないか。
 沖縄・琉球と台湾には長い交流の歴史があり、職業として台湾と密接な関係を築いている沖縄の人々、ビジネスの拠点を沖縄に置く台湾出身の方が数多くいる。経済交流の拠点として台湾政府が設置した台北駐日経済文化代表処那覇分処があり、台湾人・企業の支援を行うとともに、沖縄県における販路拡大のための事業等を行っている。沖縄県庁も台湾に出張所を置き、交流に熱心だ。コロナ前の統計だが、外国人観光入域客230万人余の中で台湾人は約80万人と、比率の第1位を占めた。
 実は沖縄と台湾の関係については暗い歴史もあるのだが、詳しく知りたい人には、様々な立場から論述された書籍が普及しているのでそちらをお勧めし、本稿では個人的経験を述べることとする。
 台湾には沖縄県庁に在職中3度出張した。初回は情報化政策の担当者として世界的なIT先進地域となった台湾の実情調査に。後の2回は基地問題・安全保障政策の担当部長として現地シンクタンク幹部等と懇談した。
 1990年代に目覚ましく発展した台湾のITインフラを横目で見ていた沖縄県は、同じ島嶼地区にあって世界をリードする基幹産業を担う台湾の姿に刺激され、その秘訣を学びたいと数次の調査団を派遣した。ヒラ職員であった私もその機会に恵まれた。