『フィンランドの覚悟』から学ぶ

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上席研究員・皇學館大学准教授 村上政俊

 令和4(2022)年夏に筆者は、フィンランド国立タンペレ大学から招聘されて、在外研究を実施した。フィンランドでの在外研究の間には、専門家に加えて、多くのフィンランド政府高官と知り合い、親交を深めることができた。大統領府、外務省、国防省において、北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請をはじめとする重要政策に携わる人々との間で、外交安全保障について、極めて濃密な意見交換を実施することができた。こうした研究成果をもとに、『フィンランドの覚悟』(扶桑社新書)を上梓した。
 我が国におけるフィンランド理解は、概ね文化、教育、福祉分野が中心だった。だが、筆者が在外研究を実施する直前にフィンランドは、ロシアによるウクライナ侵略を契機に、NATO に加盟を申請し、安全保障という文脈で同国への注目が日本でも高まっていた。
 日本においては、フィンランドを中立国と見做す向きが多く、加えてソフトパワーとしてのイメージが強かったこともあり、NATO への加盟申請というニュースは、大きな驚きをもって報じられた。だが、フィンランドは既に中立国ではなかったのだ。それどころか、NATO 加盟の一歩手前というところまで、NATO との協力を深化させていた。フィンランドが中立国だという日本での見方は、ウクライナ侵略が始まる前から、既に幻となっていたのだ。
 フィンランドの安全保障に対して、決定的な影響を及ぼしているのが、隣国のロシアである。ロシアと陸上で、1,300キロを超える国境を接するフィンランドでは、ロシアによるウクライナ侵略について、極めて深刻に捉えられている。
 フィンランドを取り巻く安全保障環境の劇的な悪化が、NATO への加盟申請へと繋がったということだ。