再現された連合国対枢軸国対立の構造
―強靭な「太平洋の盾」となる日本―

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政策提言委員・金沢工業大学客員教授 藤谷昌敏

 今から80 年ほど前、世界は大きく2つの勢力に分断された。1 つは連合国(United Nations)と呼称され、米国を中心として英国、フランス、オーストラリア、ソビエト連邦(現ロシア)、中華民国などで構成された。もう1 つは枢軸国(Axis powers)と呼称され、ドイツ、イタリア、日本の日独伊三国同盟を中心に、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアの東欧諸国、さらにフィンランド、タイなどで構成された。これら枢軸国の共通点は、第一次世界大戦終結後のヴェルサイユ体制において、「植民地を持たざる国」であることと「反共主義」であった。
 周知の通り、第二次世界大戦において、両陣営で7,000 万人から8,500 万人の犠牲者を出しながら枢軸国側が敗北した。戦後、第二次世界大戦の勃発を防げなかった国際連盟の様々な反省を踏まえ、戦勝国を中心として51ヵ国が加盟して「国際連合(United Nations)」が設立された。主たる活動目的は、国際平和と安全保障、経済・社会・文化などに関する国際協力の実現である。2023 年2 月現在、国際連合の加盟国数は193ヵ国で、世界の殆どの地域を網羅している。
 この国際連合が設立されてから78 年を経た今、世界が目指してきた国際平和と安全保障の理念に大きな危機が到来している。紛争を防止すべき立場であるはずの安全保障理事会常任理事国のロシアが2014 年にクリミア危機、2022 年にウクライナ侵攻を引き起こし、一気に欧州にも戦乱の気運が高まった。
 ロシアは、ウクライナ侵攻後、欧米との対決姿勢を鮮明化し、北朝鮮、イラン、ミャンマー、アフリカ諸国などと軍事的経済的協力を強化し、中国へも協力を呼び掛けた。欧米の軍事専門家の一部は、こうしたロシアを中心とする協力体制を第二次世界大戦の状態に類似するとして「枢軸国」と呼称している。謂わば、ロシアを軸とした反欧米連合の結束である。一方では、米国と協力体制を組む英国、日本、オーストラリアなどを「連合国」と呼称している。