激動する国際情勢と日本の課題

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政策提言委員・元航空支援集団司令官 織田邦男

はじめに

  ウクライナ侵略戦争は、2 月24 日で3年目に突入した。ロシア軍戦死者は18万人を超え、ウクライナの民間人も10万人を超えた。消耗戦が繰り返され、戦線は膠着気味で、出口の兆しは未だ見えない。

  ハマスとイスラエルの戦いも停戦には至らず(3 月下旬時点)、イスラエルとパレスチナの確執は拡大し、イランの支援を受けた武装組織ヒズボラやイエメンのフーシ派武装組織がこれに加わった。フーシ派のミサイル攻撃や艦船拿捕などに対する米英の報復が加わり、混迷が広がりつつあるように見える。

  米国は秋の大統領選を控え、世界の耳目が集まっている。共和党、民主党の対立は先鋭化し、米国が主導する国際秩序、つまりパックス・アメリカーナは衰弱しつつある。対照的に、インド、中国をはじめとするグローバル・サウスの国々の発言権が増している。中国は経済の停滞が顕著となっているが、変わらず軍拡は続けており、台湾の武力併合を否定しない。 

  世界は一極体制から無極の時代に突入しているように見える。にも拘わらず、国連は機能不全が続く。ウクライナ戦争、ハマス・イスラエル戦争、北朝鮮ミサイル発射など、いずれも国連安保理では「拒否権」の応酬が続き、本来の任務である紛争抑止、紛争調停等は、全く機能しておらず、冷戦時に回帰したかのような既視感がある。

 こういった激動する国際情勢にあって、日本はどう生き延びていけばいいのか。具体的事象を捉えながら考えてみたい。