北朝鮮が衝撃を受け注目しているウクライナ戦争(その2)

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政策提言委員・軍事/情報戦略研究所長 西村金一

はじめに

  精密誘導兵器からなる近代兵器同士の戦いは、歴史的に見て初めてのことである。精密誘導兵器は、命中率が高く、戦車や戦闘機を1 発で撃破・撃墜できる。それぞれが、戦理に合わない無謀な攻撃を行えば、簡単に破壊されてしまう時代なのだ。それでも、戦車や戦闘機は、最も必要とされる兵器である。相手の能力を正確に把握して、その隙をついて攻撃すれば、殺傷効果が大きく、攻防の戦況を変えることもできる。

  ミサイルなどの精密誘導兵器や近代的な戦車や戦闘機の戦いの陰で、戦いに大きな影響を与えているのが、電子戦である。電子戦の能力の差が、航空優勢や地上作戦に重大な影響を及ぼす。航空作戦への影響については、前回の季報に述べた通りである。

 「北朝鮮が注目しているロシアの軍事力とウクライナ戦争」について、2 回目の今号では、北朝鮮が恐れる戦闘機の作戦と地上作戦の電子戦、北朝鮮が採用したいクラスター弾攻撃とミサイル・自爆型無人機の飽和攻撃について考察する。

  図やグラフは、ウクライナ軍参謀本部などの情報をもとに、筆者が作成したものである。

 1. 戦闘機による対地攻撃支援で、地上軍の攻撃を止められる北朝鮮が南侵地上攻撃しても、米韓の航空戦力で止められてしまう

  ウクライナ軍の2023 年6 月からの反転攻勢が停止したのは、ロシア軍の防御の障害の多さ、損害を厭わない戦いなどに起因する。これらに加えて、ロシア空軍が2023 年の5 月から空爆の重点を都市から戦場に変更したことも重大な要因である。ロシア軍機の対地攻撃支援の戦果と北朝鮮が新型の戦闘機を喉から手が出るほど必要な理由について、説明する。