「蚕食鯨吞」?―2022 年9 月から2024 年1 月までの台湾周辺での人民解放軍の作戦分析―

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マンスフィールド・フェロー/米海軍士官 アンドリュー・オーチャード

はじめに

  中国語の文化では、故事成語は文字通りの意味を超えた比喩的な意味を伝える。台湾海峡の状況に関連した成語は、「蚕さんしょくげいどん食鯨呑」ではないか。強大なものが弱小なものを一気に侵略する「鯨呑」と端から徐々に侵略していく様を意味する「蚕食」を併せた成語で、「他を侵略・併合する」という意味だ。

  最近の作戦に基づいて、中国人民解放軍(PLA)は台湾を弱体化させるために「蚕がかじる」アプ ローチ(蚕食)を採用している。PLA は毎日の航空及び水上作戦は能力を示し、台湾の正統性に挑戦し、台湾に有限の軍事資源(部隊の即応性)で対応することを強いている。この戦略の影響を受け、台湾軍は政策変更を余儀なくされている。台湾空軍は戦闘機の「摩耗を抑える」ため、無人機を迎撃することはもうしていない。

  2020 年9 月から台湾国防部(MND)は、PLA による台湾防空識別圏(TADIZ)中間線侵入を文書で公表した。その後、台湾は2022 年8 月5 日、PLA の台湾周辺の活動に関する航空・海上を統合した日次報告を出すことにした。MND は2023 年12 月に気球の詳細を追加し、2024 年1 月16 日にTADIZ 侵入飛行経路の情報を縮小した。

  MND の報告書は、PLA が過去数年間、台湾周辺で日常的にどのように「蚕食」作戦を行ってきたかを記している。初期のPLA の作戦では偵察機と戦闘機が頻繁に使用されたことから、プレゼンスを確立し、領域認識を獲得したと考えられる。PLA がより多くの戦闘機を飛行させ、1 日に2 桁の航空機を侵入させる日を増加させる中、作戦の第2 段階では頻度と数を改善することに焦点を当てたと考えられる。1 日2 桁台の侵入の増加は、台湾が国際社会、特に米国と連携する際の能力を中国が知るために、台湾周辺での作戦を利用しているためである可能性が高い。ペロシ米下院議長の台湾訪問に対する反応は、台湾を封鎖し、局地的な航空、海上の優位性を確立することを目的としていた可能性があり、これは人民解放軍東部戦区(ETC)の「鯨呑」作戦であったことを示している。