行為する者

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理事・元陸上幕僚長 岡部俊哉

 令和6 年1 月1 日16 時10 分、石川県能登地方を震源とする最大震度7 の地震が発生した。発災に伴い、当該地域の防衛・警備、災害派遣等を担任する第10 師団が即時救援活動を実施するとともに、防衛省は中部方面総監を指揮官とする統合任務部隊を編成(1月2 日~ 2 月2 日)して対応し、現在(3月初旬)も災害派遣を継続している。

 「令和6 年能登半島地震」で犠牲になった方々の御冥福、1 日も早い復旧・復興をお祈りするとともに、現地で任務に邁進する部隊・隊員に心から敬意と感謝を申し述べたい。

 本災害派遣活動については、特にその初動に関し一部の野党議員、マスコミ等から「後手後手」や「戦力の逐次投入」などいった、過去の派遣・活動との無意味な比較に基づく非難等が国会の場を含めて流布された。自衛隊の信頼性を貶めるとともに、現地で真摯に活動する隊員の士気を大いに低下させるもので、悪意さえ感じた。

 《 行為する者にとって、行為せざる者は最も過酷な批判者である。》(福澤諭吉)

 国防に任ずる自衛隊を災害対応専門組織と勘違いしている、或いは地域の地形特性や部隊運用を知らない、汗をかかない者に自衛隊員は元より国民が惑わされぬよう願う次第である。

 そのような中、1 月7 日に「令和6年第1 空挺団降下訓練始め」が開催された。本訓練は防衛大臣自らが訓練視察して、現地において直接隊員に対し訓示するもので、その内容は大臣の年頭の公式発言として、訓練とともにメディアからも注目されている恒例行事である。当日は訓練終了後に実施される部内外の約2,000 名による野宴(非公式行事)は中止されたものの、木原稔防衛大臣の訓練視察・訓示や一般への公開は予定通り実施された。

 訓練については、我が国の現下の安全保障環境を反映した島嶼防衛のシナリオを凝縮して行われ、空挺作戦、ヘリボン作戦、島嶼守備部隊の上陸及び他国軍の来援が一連の状況で実施された。

 狭い習志野演習場において安全確実に降下するには、かなり厳しい強風下ではあったが、時折風が弱まる絶妙なタイミングを見計らって、小規模でも大空に落下傘の華を咲かせた陸上自衛隊第1 空挺団の訓練に対する執念と練度には脱帽した。