尖閣問題、竹島と同じ轍を踏むことなかりしや ―その3―

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元海上保安庁警備救難監 向田昌幸

Ⅲ 竹島問題と同じ経過をたどっている尖閣問題
1 .尖閣問題の概要
 日本政府は、未だに中国による尖閣諸島の領有権主張を封じ込めることが出来ないどころか、中国側に同諸島周辺の我が国領海における常態的な主権侵害を許す事態に至っている。これではまさに尖閣諸島の領有権を巡る日中間の国際紛争の様相を呈しており、客観的に見ると最早尖閣問題は日中間の領土問題と化している。
 そこで、まず尖閣問題の端緒とこれまでの経緯をざっと振り返った上で、このような由々しき事態を招いた要因ないし背景とこの問題を巡るこれまでの日本政府の対応に関して反省すべき点を述べることとする。

⑴ 尖閣問題の端緒とこれまでの主な経緯
 尖閣問題は、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が1969(昭和44)年5 月に尖閣諸島周辺の東シナ海の海底に膨大な石油資源が眠っている可能性があると発表したことから、その石油資源に目がくらんだ台湾の中華民国(以下「台湾」)が同諸島の領有権を主張し始め、その半
年後には中華人民共和国も「台湾は中国の一部」とだという主張に相乗りする形で領有権を主張し始めたことに端を発している。