世界情勢の混迷と日本政治に求められる変化

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顧問・元軍縮会議日本政府代表部大使 髙見澤將林

これまでの常識が通用しない世界
 2022年のロシアのウクライナ侵攻の長期化とその背景となった国際関係の枠組み揺らぎが深刻化する中で、我々が直面している2025年の世界情勢のこれまでの展開は、戦後の歴史の中でも根本的な変化として位置付けられている。過去半世紀の歴史において、その当時前例のない変化と言われた事象(例えば1989年の冷戦の終結と55年体制の崩壊に伴う自民党の下野、2001年の9.11テロ後の対テロ戦争における「国際協調」の下での米国の国力低下とリーマンショックで加速された中国の国力増大、2014年のロシアのクリミア併合の既成事実化と米露関係の緊張など)は少なくないが、現在生じている構造的変化とその行方の定まらぬ状況は、これらのケースとは大きく異なっている。