戦後体制の限界と新体制の構築

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政策提言委員・元内閣官房副長官補 兼原信克

1 .戦後日本の体制
⑴ 吉田茂の決断
 戦後日本を築いた大宰相と言えば、吉田茂と岸信介である。これだけの器の宰相は、中曽根康弘首相と安倍晋三首相まで出ない。
 吉田の業績は、日本の独立と日米同盟の選択である。それは不可避の選択だった。独立当時、帝国陸海軍を解体された日本には軍隊がなかった。マッカーサー連合国軍総司令官が、征服した戦後日本の第1頁に自らの足跡を残そうとして、憲法9条2項の完全非武装条項を入れたからである。 
 憲法9条1項の戦争禁止は、国連憲章第2条4項と同様の規定であり、人類が到達した不戦の思想そのものである。しかし、「日本に二度と武装を許さない」という世界史の中で珍しいほど峻厳な憲法9条2項は、国連憲章第53条と第103条の旧敵国条項と同じ思想で書かれている。敗戦国日本には二度と武器は持たせないということである。