歴史認識の相違が阻害する 「未来志向の日韓関係」

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顧問・元ベトナム・ベルギー国駐箚特命全権大使 坂場三男

 去る8月23日に李在明韓国大統領が訪日し石破総理との間で首脳会談が行われた。今年は日韓国交正常化60周年に当たり、特別に重要な意義を持つ首脳会談であった。韓国大統領が初外遊先として訪米に先立って訪日するのは国交正常化後初めてだという。会談後の報道を見る限り、大方の事前予想の通り、実用外交の原則から「未来志向の共存共栄の関係を構築する」との李大統領の考えが示され、両首脳の頻繁な相互訪問、所謂「シャトル外交」を行うことで意見が一致している。共同プレスリリースでも水素やAIなどの未来産業を含む多くの分野で協力していくことを確認した。大変結構なことであるが、首脳会談の半月後に当の石破総理が国内政局を理由に辞意を表明したことで、全ては「元の木阿弥」となりかねない残念な状況である。
 実は、李大統領は8月15日にソウルで開催された光復節式典での祝辞の中で既に同趣旨の考えを表明している。大統領選挙前の発言では日本を「敵性国家」と呼ぶなどたびたび反日的な言動が見られたが、当選後は「実用外交」という現実主義に軌道修正した。