はじめに
 英国の最新空母プリンス・オブ・ウェールズが8月下旬、日本に寄港した。現在の日英の良好な関係を確認できたところで、本稿ではその重要性を地政学的に説明するため、季報Vol.104の拙稿で紹介した地政学者のうちの1人、ニコラス・J・スパイクマンの提唱した「リムランド論」について少し掘り下げてみたい。
 
スパイクマンのリムランド論
 スパイクマンが提唱した「リムランド論」とは、ハルフォード・マッキンダーが提唱した「ハートランド論」に対抗する理論として登場したものだ。マッキンダーは大陸国の聖域であるハートランドが最も重要で、これを押さえることができれば世界を制することができるという仮説を提唱した。だが、当時のハートランドは確かに海洋国の手の届かない聖域であったが、今では航空機やミサイルの発達によって、すでに聖域などではなくなっている。