国際秩序は崩壊したのか―日本の進む道とは―

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政策提言委員・麗澤大学特任教授 江崎道朗

米国は「世界の警察官」ではない
 我が国が、自国の生存と繁栄を自らの手で確保すべく、独自の国家安全保障戦略を初めて策定したのは、第二次安倍晋三政権下の2013年のことである。
 敗戦後、「陸海空軍その他の戦力」を保持しないことを明記した現行憲法の下で、我が国の安全保障は一貫して米国への依存を基礎としてきた。1945年当時、米国は世界の国内総生産の約半分を占める圧倒的な経済力と軍事力を誇り、「軍隊」を持たぬ我が国は、その庇護に依存せざるを得なかった。冷戦期、我が国は米国主導の自由主義陣営に身を置く選択を行い、その一員として経済的繁栄を追求することを許された。その間、国際社会の平和と安定は、自らを「世界の警察官」と位置付ける米国によって支えられてきた。
 しかし、1991年のソ連崩壊と東西冷戦の終焉は、中東・アジア・アフリカにおける地域紛争の頻発をもたらした。とりわけ近代産業国家の主要エネルギー源たる石油の一大産出地域である中東の安定を、誰がどのようなコストを払って維持するのかが、喫緊の課題として浮上したのである。米国は、中東の石油恩恵を受ける日本を含む各国が、その平和維持コストを分担すべきだと主張したが、我が国は現行憲法を盾に、その負担を極力回避しようとした。