「量」から「質」へ転換する中国海軍と対抗する日米韓
―中国の原子力空母建造計画と西太平洋の戦略環境の変化―

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政策提言委員・元公安調査庁金沢事務所長 藤谷昌敏

はじめに
 空母建造は、中国が「大陸国家」から「海洋国家」へ変貌しようとする象徴的な国家プロジェクトである。
 2020年代後半、中国の空母建造計画は新たな段階に突入した。遼寧・山東・福建の3 隻体制に加え、2025年には4隻目となる原子力空母(通称004型)の建造が始まったと報じられ、米国防総省は「中国は2035年までに空母9 隻体制を構築する」と予測している。
 中国の空母建造の目的は、①米海軍への対抗(特に西太平洋に重点を置いた権益の拡大)②海洋権益の保護(領土主権・海洋資源・安全保障・法執行など) ③海上交通路(SLOC)の確保 ④外洋での軍事的展開と航空優勢の確保 ⑤グローバルな政治的影響力と軍事力に裏付けられた外交的威圧―といった複合的な性格を持つ。
 こうした中国の空母建造計画は、単なる軍事技術の進歩ではなく、これまでチベット、内モンゴルなどの周辺国家を緩衝地帯としてきた国家戦略を海に拡大させたものであり、より積極的な覇権国家への変容を物語るものである。