高市政権の1年

.

政策提言委員・経済学博士 篠原 章

 日本初の女性宰相・高市早苗氏が首班を務める政権が発足したのは2025年10月21日であった。間もなく1年を迎えるこの政権の評価は立場によって異なるが、本稿では「何を決定したか」と、その決定が「どこまで実行され、能力として裏付けられたか」を区別する視点からその歩みを整理したい。
 防衛予算の増額や法律の成立は政策のアウトプットであって、それ自体が抑止力や経済の実力を意味するわけではない。政権を支持する立場は、決定を成果として数えがちであり、批判する立場は既に実現した制度改革まで無視しがちである。両者を混同せずに切り分けることが、公平な評価の前提になると思う。
 以下では、国防政策・危機管理・外交を中心に論じたのち、防衛財源を含む経済財政政策を扱い、最後に今後1年で問われる課題を整理する。
 
国防政策──「構想」から「戦力」へ
 高市政権は、2022年末に改定された国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の「戦略3文書」を、2026年中に前倒しで改定する方針を打ち出した。理由として挙げられているのは、ウクライナ戦争を通じて無人機の大量運用など「新しい戦い方」が急速に広がったこと、長期化する戦争を前提とした備えが必要になったことである。