第141回
『令和2年度版防衛白書』の説明を聞く

長野禮子 
 今回は参加人数を限定した中での説明会開催となった。
 本年度の『防衛白書』は、昨年よりも早い時期の発行となり、装いも元号である令和の典拠にある「梅」を意識した色彩、デザインが採用されたものとなっている。さらに、新型コロナウイルス感染症に対する防衛省・自衛隊の活動、中東・アフリカに関する節を新設したほか、60周年を迎えた日米同盟など多面的に内容を紹介。本年度より、QRコードによる即時再生可能な関連動画約50本が随所にちりばめられている。
 今年で刊行50周年を迎えた本年度白書の本編は4部構成で、第1部「わが国を取り巻く安全保障環境」、第2部「わが国の安全保障・防衛政策」、第3部「わが国防衛の三つの柱」、第4部「防衛力を構成する中心的な要素など」という内容になった。
 第1部では、地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっている中国に触れ、尖閣諸島周辺での活動に対し、防衛白書では初めて「執拗に継続」という強い言葉で表現している。また、依然として日本への脅威である北朝鮮のミサイル問題やロシアの動向にも注視し、新型コロナウイルス感染症を巡る中国等の諸外国の動きも紹介している。
 第2部では、日本の安全保障に関する基本的な事項を包括的に説明しており、憲法9条における自衛権の解釈、新防衛大綱、中期防、今年度防衛関係費等を記述。
 第3部では、日本の防衛体制、日米同盟、安全保障協力にそれぞれ章を設け、新型コロナウイルスへの対応や日本の大規模災害派遣に尽力する自衛隊の活動を発信している。
 そして第4部では、これら日本の防衛力を支える人的基盤や装備・技術を取りまとめ、最後に即位の礼への参加や、来年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックへの協力について紹介している。
 質疑応答では、一時期より遠のいたかに見える憲法改正についての議論や、我が国正面にある現実的な「脅威」にも、依然「専守防衛」を念頭に対処しなければならない日本のお国事情、6月に断念したイージス・アショアの代替案の検討、また特に北朝鮮・中国への「懸念」「脅威」といった表現選択についての質問、図表・画像のより利便性のある使用方法の提案、各国国防費の比較方法等々、読者である国民により分かり易い編集をすべきではないかとの意見が出された。
テーマ: 『令和2年度版防衛白書』の説明を聞く
講 師: 斎藤 雅一 氏(防衛省大臣官房公文書監理官)
日 時: 令和2年7月30日(木)14:00~16:00
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