第4回「防災と法」研究会報告要旨

                   「東日本大震災と法制検討」

                                                                   事務局長  井 晉
 
   第4回研究会は、第3回研究会までに提起された問題点を整理し、次回以降の研究会で検討すべき課題について、「意思決定」、「各国との協力」の項目において意見交換が行われた。 以下、各項目においてなされた議論について述べる。 
 
1、「意思決定」 
 この項目では、@省の意思決定、A政府の意思決定を取り扱い、「運用」の項目で、B初動対処、C統合運用、D人命救助等、E生活支援、F物資輸送、G原発事故対応、H要人等輸送を取り扱いなど多岐にわたる議論がなされた。 
 @ 省の意思決定 
 東日本大震災の発災後、政府は発災害対策本部を設置し、同本部での会議で対応方針を決定した。また、SR(シュミレーション・ルーム)を設置し対策本部の支援を行った。このSR設置は有用であると考えられるため、可能な限り早期に設置し、要員の確保、中央指揮所への課長級の位置、SRによる一元的な情報集約・居閏要領の検討が必要である。 
そこで、官邸の危機管理センターとの通信システムの構築が必要となる。また、政府、商の指揮所が被災した場合の予備指揮所の指定ししくい通信システムの構築が必要となる。 
 A 政府の意思決定 
 発災時において政府は官邸、対策本部、他省庁等多方面からの依頼に対応することになる。これに対して、今回の震災において、初期段階、相互関係、優先度の判断がつかず、対応困難な状況が生起してしまった。そこで、このような多岐にわたる依頼に対しては予め部内の共通認識を図ることが必要である。 また、LO派遣(Liaison Officer、連絡幹部の派遣)も、より効果的な派遣のため、要員の指定・選定、派遣及び運用要領等について検討の必要がある。具体的にはシフト勤務態勢の観念の構築が求められる。 
 B 初動対処 発災直後より航空機による情報収集、人命救助等の迅速な初期対応を実施。10万人態勢の構築等により総力を挙げて対応し、各任務遂行に当たっては概ね円滑に実施することができた。ここから、必要な情報を適時適切に出発することが極めて重要であることが再確認された。よって、今後は国防との調整を図った災害対策の人員の指定や、最大規模の具体的な人数を明確にすべきである。 
 C 統合運用 
 今回の震災において、大震災による救援活動、原災活動は長期化し、日米調整機能や輸送統制機能の強化に若干の時間を要してしまった。今後、想定される各種事態に応じて編成要領、計画をあらかじめ準備しておくことが求められる。また、統幕・各幕との役割分担、統幕の運用調整機能について統幕機能強化等を含めた検討が必要である。 
 D 人命救助 
 被災者捜索、人命救助活動を全力で取り組んだものの、信号機の故障による緊急交通誘導の実施など、発災後72時間の間に人命救助に投入で悔いた隊員の数に限界が存在していた。災害発生時における自衛隊の活動権限について検討が必要となる。 
 また、自衛隊のみならず、政府、自治体、指定公共機関、国民を含めた訓練を実施し国レベルで災害に対する処理能力の向上を図る必要がある。 
 E 生活支援 
 給水・給食、燃料、入浴、医療、その他の生活支援の要望を踏まえ総力を挙げて活動を実施した。ただ、緊急の感謝輸送要領などは、関係省庁間でさらに情報共有についてなど検討する必要がある。自治体職員の危機管理の能力の向上措置が求められる。 
 F 物資輸送 
 救援物資の輸送は自衛隊の航空機、艦載ヘリなどを駆使し柔軟かつ機動的な実施がなされた。しかし、自治体のニーズの把握困難や、交通規制権による支援物資の被災地内外における一時的滞留状態を生み出してしまった。ゆえに、事態認定時における自衛隊の部隊等指揮官を追加(相互調整、通知処理必要)する必要がある。 
 G 原発事故への対応 
 放水等様々な活動を実施した。隊員の多くは原発事故に対する知識がなく、応急的に教育して実施した。ゆえに事故書道における状態把握、情報共有等に課題が残る形となった。今後は対応の実効性を高めるべく、政府、自衛隊における各種対処計画の見直し、教育訓練体制の強化、関係国との連携強化などの体制整理が必要となる。具体的にはNBC対処部隊、研究所の創設が求められる。 
 H 要人等輸送 
 政府や各省庁から自衛隊航空機等による輸送依頼が殺到。このような状況における輸送基準や部隊相互の連絡調整の検討が求められる。 
 
2、「各国との協力」 
 この項目では、@日米共同、Aその他の国との連携について議論がなされた。 
 @ 日米共同 
 日米共同においては震災対応における関係省庁を含む政府全体の日米調整の枠組み整備に課題がある。調整メカニズムのあり方や調整所の位置づけの検討、国内災害時における日米の役割・任務・能力を明確にし、合相互支援できる共同要領の具体化が必要。 
 A その他の国との連携 
 今回の震災において、米国以外の国からの支援を受け入れるにあたっては個別の状況に合わせて柔軟な対応がなされた。しかし、当然他国軍の活動状況は把握しておかねばならず、軍同士の連携には課題がある。支援を受け入れるに際して円滑に実施するためには、態勢、要領について更なる検討が必要であり、扱いを米軍並みにするか否かの検討は早急に必要である。
 
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