第5回「防災と法」研究会報告要旨

                                                                   事務局長  井 晉
 今回の研究会は、法律改正案、すなわち「憲法および法律の改正を必要とする事項」について検討を行った。それに先立ち、提言事項の一つである「憲法及び法律の改正を必要とする事項」について討議された。前衆議院憲法調査会長、元外務大臣中山太郎氏の「緊急事態に関する憲法改正試案」の説明が行われ、同思案における文言や表現方法を援用するか否かについての概定をおこなった。この試案の文言は法律改正案を出すにあたっての明文化作業時の参照になると考えられるためである。
 続いて、具体的な法律改正案の検討に移り、@「地方公共団体の長に事故ある場合の規定」、A「政府、地方公共団体と原子力業者との合同対策本部」、B「政府の対策本部等の下部組織の設置根拠の設置根拠、権限の新規制定」の3点について活発な議論がなされた。

 @「地方公共団体の長に事故があった場合の規定」
 地方公共団体の長に事故があった場合の規定の検討であるが、これは地方自治法においては職務代行者の不存在が問題となる。地方公共団体は長がいなくては権限がない。たとえ震災などにより地方公共団体の長の生死が定かでない場合であったとしても、長なしで行動ができないのである。そこで、地方公共団体の長に事故ある場合の規定を盛り込むことについて、政府レベルで議論して法律上で定めなければならない。
 ただし、実態面においてあくまで災害対策の主体は市町村が中心であり、ここの強化なしには何もならない面が多い。したがって、市町村ができないことを国が関与していくという形が望ましい。

 A「政府、地方公共団体と原子力業者との合同対策本部」
 政府、地方公共団体と原子力業者との合同対策本部の設置に関しても、@と同様、災害対策の主体は市町村が中心であることから、まずは市町村を中心に取り組めるような形が理想である。ただ、市町村のできることは限られており、これらができないことに関しては県知事が指揮を取り対処にあたることができる。しかし、普段の業務において市町村と県は対等の立場であるため、災害時において、市町村が対処できない問題があった場合に県が優先させるという頭の切り替えがスムーズに行かなかった面があった。
 このような事態をまた作り出さないためにも、今後は政府、地方公共団体と原子力業者との合同対策本部の設置が求められる。また、そのためにも事故災害の概念が政府、地方公共団体と原子力業者の間で異なるので、その調整も図る必要がある。

  B「政府の対策本部等の下部組織の設置根拠の設置根拠、権限の新規制定」
 政府の対策本部等の下部組織の設置根拠の設置根拠、権限の新規制定にあたっては名称の含め権限の明確化を図るべきである。今回の震災においては権限が明確に定められていなかったがために、対策本部の乱立が起きてしまい、総理の発言が、総理としての発言なのか対策本部長としての発言なのか、分からない面が多かった。今後このような混乱が起こらないためにも権限の明確化は急務である。
 具体的には災害対策基本法など一元的に整理された法体系にしていくことが望ましい。そのためにも、新規制定にあたっては原子力安全保安院との関係、海外軍隊の受け入れと主権とのかね合い、日米地位協定との調整等の議論を行い各機関や概念、条約等の相互を関連させ一元的に行う必要がある。


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