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第6回「防災と法」研究会報告要旨

事務局長　　髙井　晉

　第6回研究会は、「法令の運用解釈及び実行能力の向上」であり、運用解釈と実行能力向上の2点について議論を行った。
◆確認事項
　先ず本研究会の検討課題の確認を行った。すなわち法律改正案まで踏み込む検討事項は、①地方自治団体の長に事故ある場合の規定の追加（地方自治法、災対法、憲法）、②対策本部の下部機関の設置根拠、所掌事務・権限の追加（災対法、原災法）、および③緊急対策本部と原子力災害対策本部との統合、特例規定の追加（災対法、原災法）（下部組織の濫用の防止のため）であることを確認した。
　続いて、検討課題として法律改正案としない検討事項は、①政府、地方公共団体と原子力業者との合同対策本部の設置（政府等の運用課題、原子力事業者の招致・報告義務を強要）、②憲法への緊急事態条項の追加（長期課題として付言：中山太郎案の反映）、および④米国を除く外国部隊の救援活動時における行動間の権原（米軍に関しては日米地位協定による）であることを確認した。
◆討議事項
　1　検討事項の確認後、検討すべき法令の運用および解釈として、①定期的な安全保障会議の開催、②総理指示の法的拘束力、③主務官庁、自治体の機能不全状態における特例措置の指示の3点について議論が行われた。
　① 定期的な安全保障会議の開催
　現在、安全保障会議は、テロなどの緊急時に、緊急事態の宣言をするにとどまり会議自体が通過儀礼となっており、形骸化もしくは手続化してしまっているため、先ずはしっかりと会議を開かなくてはいけない。また、自衛官10万人態勢がとられた今回の震災対応であるが、同時に国防との調整を図らなくてはならない。そして、将来の施策を考え、防衛大綱を見直し、人的戦闘力の増加、物的戦闘力の新規開発及び再検討まで踏み込んだ議論が必要となる。
　② 理指示の法的拘束力
　今回の震災では、総理自身の理解力不足、対策本部長の権限との混同が顕著に発生しており、指揮系統の改善は急務である。また補佐機能の欠如も総理の指揮系統の混乱を招いた原因の一つとも考えられる。しかし、補佐機能といっても補佐官自ら災害経験を有しているか、災害時における対応能力を備えた者でなくてはその役割を果たせないので、任命される人物については注意が必要である。
　③主務官庁、自治体の機能不全状態における特例措置の指示
　被災地での自衛隊による実行措置は、瓦礫処理、遺体搬送・埋葬、自治体事務の一部代行等であったが、現場で上官からの命令が下るのを待って行われた。しかし、政府が一元的に方針を示せばより円滑に行えた面があることは否めない。今後は災害対策基本法の権原の円滑化施作の推進や、疑念なく実施できる体制を担保できるような代行機関の指定についての公示措置を行う必要がある。
　2　次に、実行能力を向上させる方策として以下の4点、すなわち①総理、対策本部の指揮能力の向上、②防災用機材・資材等の取得、開発、③防災施設・拠点、支援施設の取得・分配、および④国民の自助精神の高揚、実践について議論を行った。
　①の総理、対策本部の指揮能力の向上については、防災訓練、特に応急対処訓練を充実させる必要がある。具体的には、法令を「知り、使い、使いこなす」能力が求められ、これを向上させるためにも実践を踏まえた地に足をつけた防災訓練が必要である。
　②の防災用機材・資材等の取得、開発については、まず指揮通信を統一させ、輸送手段をより柔軟にし、被災地における活動をより円滑に進むように調整すべきである。
　③の防災施設・拠点、支援施設の取得・分配については、もう一度見直すべきである。具体的には、被災現地の見直しや防災施設と減災施設の併用の検討、また、港湾、飛行場、道路網の再点検が必要である。
　④の国民の自助精神の高揚、実践については、防災訓練や、研修、マニュアル等の配布などが考えられる対応策であるが、何よりも公助、共助の限界を認識し防災に関する意識の変化を促す必要がある。

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